復刻『週刊 岡庭昇』

〜岡庭昇を因数分解する〜

第3回 2017年1月9日(月)

『性の歪みに映るもの 日本近代文学と身体の倒錯』の一節を読み合いました。

この一節に読むキーワードは、「近代化」「制度」「規範」でした。

A:
この一節、猛烈に深い! 何度も読み返してしまう一節だね。
「近代化」とは何だったんだろう? そんなことを改めて考えさせられる。

B:
新しい社会を作るためには制度が必要だけど、制度だけじゃ作れないんだと、岡庭昇氏は断言している。

A:
制度と規範の両方が近代化を進め、ふたつは二個一(ルビ:にこいち)ではなくて、実は、制度は規範が根底にあったからこそ成立した。制度より規範の方が上にある。近代化を考えるとは、規範を認識することなんだ。

B:
ふむふむ。たとえば「正常人」の視点も規範で、差別の根源だと岡庭氏は書いている。また、規範を描写している文学…… たとえば、広津柳浪の『変目伝(伝→旧漢字で)』、嘉村磯多の『崖の下』、野間宏の『崩解感覚』が登場するんだけれど、ああ、岡庭昇氏の読み込む力には、今さらながら唸ってしまう。

A:
「深刻小説は、規範としてのリアリティの確立とともにおわるが、たとえば江戸川乱歩から横溝正史にいたるエンターテイメントとして、欠損としての身体は、ひそかなリアリティの系譜をかたちづくる」とあったが、つまりは差別を媒介として規範が再生産されるということだろうか。 

20170109

野野花
人を支配するには、制度だけでは不十分だと父は書いています。
「制度よりも大きな存在である規範」がなければ、新しい社会は生まれなかった。
それは、歴史をたどっても言えるし、これからの世の中にも言えること。

支配者とは「規範」を作り出す者のことではないでしょうか。

 

次回の編集会議は、1月16日予定です。どうぞお楽しみに。