復刻『週刊 岡庭昇』

〜岡庭昇を因数分解する〜

第53回 2018年3月19日

こんにちは、岡庭野野花です。

平昌オリンピックが終わり、米朝首脳の直接会談が急ピッチで進んでいます。その一方で、ティラーソン国務長官が“Twitter解任”(ツイッターで発表されてから本人に通知)されて、マイク・ポンペオ氏となりましたね。日本もなんだかバタバタしていますが、アメリカもいやはや相変わらずです。

ところで、マイク・ポンペオ氏とはどういう人物なのでしょう。今日はそこから話しましょう。

 

A:

マイク・ポンペオは、福音派クリスチャンの中でも右派に属していることで知られ、中絶ゲイに反対していますよね。右派福音派といえば、ペンス副大統領もそう。この福音派がトランプの堅い支持基盤だというのはいうまでもありませんが。

B:

就任一年後の支持率としてはトランプ氏の支持率40%は戦後最低。これが崩れないのは、強固な支持層を背景に『キリスト教福音派』がいるからで、政権の政策決定に影響を与えていると聞きました。

 

A:

キリスト教福音派は、聖書を重んじるプロテスタントの一派。アメリカの人口の4分の1を占めていて、アメリカ最大の宗教勢力ともいわれています。今回のマイク・ポンペオ氏の起用も、11月の中間選挙をにらんでの起用だと想像するのが普通ですよね。

 

野野花:

キリスト教福音派といわれる人々は、『無知こそ善とする思想、反知性主義』を持っています。福音主義とは「福音」、つまり聖書を一字一句信じてその通りに生きんとする、いわゆるキリスト教原理主義のこと。自らを福音派とするアメリカ人は全人口の3割を占めているのです。彼らにとって余計な知識は聖書への疑いを増すだけで、より無知なものほど聖書に純粋に身を捧げることができるとしています。

 

B:

アメリカには、100万を超える自宅学習家庭があると聞き、驚いたことがあります。

 

A:

はい。全体の75%がキリスト教原理主義です。高等教育を受けていない親が自宅で子どもを教えて、次世代へと継承されていく。

 

B:

もしかして、アメリカの一流大学の理系学生の半分以上が、アジア系かアジアからの留学生だという状況にも関係があるのでしょうか。

 

A:

原因の一つだと言われています。アメリカの大学で博士号を取得する人の4割が海外出身者ですから。キリスト教原理主義の彼らには、進化論への根強い批判があります。

 

B:

あ! 映画の公開のことで何かニュースになったことがありませんでしたっけ。

 

A:

『クリエーション』ですね。進化論を確立した英博物学者のチャールズ・ダーウィンを描いた、2009年の映画『クリエーション』。進化論に対する宗教的な反発感があって、アメリカの複数の配給会社が配給を拒否して、公開が延期されたのでした。

 

B:

「アメリカ国民にとっては矛盾が多すぎる」との見解ですね。アメリカでは進化論を信じるのは40%くらいで、ダーウィンにも「人種差別主義者」との批判があるって。

 

野野花:

「聖書に書かれてあることは100%正しい」と、信じ込んでいて、広い世界に関心を持たない人たちがアメリカの政治を動かしていっても過言ではありません。福音派は元来、彼らにとっては「俗事」でしかない「政治」には関心が薄かったのでしょう。

共和党の話につながりますが、それはまた翌週にいたしましょう。 

 

f:id:okaniwanonoka:20180326140417j:plain