第46回 2018年1月15日
こんにちは、岡庭野野花です。
編集スタッフが古本屋さんで入手した『帝国の暗闇から』には、父のサインがありました。今は古本もamazonで入手できますが、著者から読者へと、手渡すっていいですよね。
今日はまず少し時間を巻き戻してみます。2002年5月8日に、北朝鮮からの亡命者5人が中国の日本国総領事館に駆け込みを画策、失敗した出来事を覚えていらっしゃるでしょうか?
A:
あ、はい。思い出しました。中国人民武装警察部隊に取り押さえられた事件ですね。この時、総領事館の敷地内に無断で足を踏み入れて、逮捕された亡命者が北朝鮮へと送還される可能性があって……
B:
日本総領事館の敷地に入った中国武装警察官に対して、副領事の宮下謙が、亡命者の取り押さえおよび敷地立ち入りへの抗議を行わず、武装警官の帽子を拾うなど友好的な態度に出た映像が、日本のテレビで報道されたのを覚えています。
A:
日本と大韓民国における批判を呼んだという事件でした。この問題は、本来無断で総領事館に中国人民武装警察部隊が踏み込んだことの問題と、亡命した北朝鮮人民の強制送還との話が混ぜ合って、メディアが毎日取り上げていたんです。
私もよく覚えていますが、この出来事について、『帝国の暗闇から』で、父は書いていました。
読んでみましょう。
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P87
第2節 帝国の傲慢、帝国の欠乏 より
日本という国の権力意志
それも当然ではあるが、次いで中国政府が彼らを第三国経由で韓国に送るとともに、この話題はあっというまに終息した。この国はいつもそうだ。考えることもないまま瞬間湯沸かし器みたいにいきり立ち、こんどは何も終わっていないのにきれいに忘れてしまう。まったく情報の出し方ひとつで、どうにも操ることができる民衆だと痛感する。
従ってこの話題は本質的には、まったく問われることがなかった。じつは極めて重要な出来事であり、日本の詐術的な官僚行政の、ある種本質を示している。それゆえ、この問題を蒸し返すことにする。
結論を先取りすれば、これは日本という国の国際的な対外態度に潜む、恐ろしいほどの認識の欠如であり、それがただの駄目さ加減ではなく、植民地を有した帝国としての当時を反省したくないというところに、意図してその理由を発生させているという事実である。
まず、中国が国際慣行に反することで、日本の主権を侵害したことは明らかである。そのことに間違いはないが、その自明な事実に含まれた多くの背景がある。
たとえば、この場合、北朝鮮と中国はグルだという決め付けが我々にはあった。そしてアメリカに肩入れした開戦当事者のごとき気分があって、いやが上にもけしからんという盛り上がりがあった。後日これは、2002年の後半の話題を独占する「拉致」問題に結び付く。この辺り、「9.11以降」のこの1年に限っても、状況はどこか偶然にしては、整然とまとまりすぎていないかとも思うがそれはひとまず措く。
冷静に考えて現在の中国が、北朝鮮と運命共同体だという認識をしているだろうか。それはあまりにも無邪気な先入観ではないだろうか。
要するに、総合的に判断すればこの「映像つき亡命」は、アメリカ、日本、中国共同のいわば八百長であっても何ら不思議はないのである。
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A:
当時、私も瞬間湯沸かし器で、操作されていたんだと反省します。
B:
反省するとともに、考えを深めるきっかけになりますね。
野野花:
父はこの後も続いて綴っています。
戦後日本は、現在南北朝鮮の分断のプレ朝鮮戦争とも言える済州島の「4・3」虐殺や、台湾で起こった「2・28大虐殺」など、封印され切った事件をまったくなかったことにしている日本という国について。
私は、今の日本の日本政府の、なんだか良くわからない曖昧さに通じている気がしています。
散歩の途中にツバキの蕾を見つけました。
第45回 2017年1月8日
明けましておめでとうございます。岡庭野野花です。
2016年12月にブログを始めて2年目なります。
心穏やかに新しい年を迎えられますようにと願っていましたが、
みなさまはどんな2018年をお迎えでしょうか。
つたないブログですが、コツコツと綴っていきたいと思っています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さっそくですが、北朝鮮は韓国が提案していた南北当局者会談開催に同意して、9日に板門店の韓国側施設「平和の家」で高官級会談を行ったというニュースから。
韓国側は朝鮮戦争などで生き別れになった南北離散家族の再会行事を旧正月(今年は2月16日)に合わせて開催することを提案して、これを話し合うための赤十字会談開催を持ち掛けたといいます。
これに対して、北朝鮮首席代表として出席した対韓国窓口機関・祖国平和統一委員会の李善権(リ・ソングォン)委員長は、
「北南(南北)の問題を対話と交渉で解決していきたい」と述べただけで、具体的な返答をしなかったようです。
時計の針は戻るようで、根っこで関連している出来事がありましたね。三が日が明けた4日の夜、トランプ米大統領と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は電話で協議して、2月に開催される平昌冬季五輪の安全確保のために、期間中の米韓合同軍事演習を延期することで合意しました。
米韓電話協議後の韓国側の発表を読むと、9日に行われた会談については事前に、「南北対話が北朝鮮核問題解決のための米朝対話の雰囲気醸成にプラスになると確信する」と米国にも対話を促しとのことです。
その一方で、NHKのニュースでは、このようなニュースが流れていました。
「ソウルを訪問している外務省の金杉アジア大洋州局長は8日午前、韓国外務省で北朝鮮問題を担当している李度勲(イ・ドフン)朝鮮半島平和交渉本部長と会談しました。
会談の詳しい内容は明らかになっていませんが、この中で金杉局長は南北が歩み寄るか注目される中でも、北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させるため、国連安全保障理事会による制裁決議の完全な履行など日韓が連携して圧力を最大限高めるよう呼びかけたと見られます」
続いて
「また、金杉局長は、午後には韓国外務省で日本を担当する局長とも会談する予定で、慰安婦問題をめぐる日韓合意について、先に文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、
『この合意で慰安婦問題が解決したということは受け入れられない』
と述べたことについて、合意の変更は認められないとする日本側の立場を改めて伝えるものと見られます」
なんとなく、韓国が北朝鮮への対話を求めて会談を持ちかけたのと、日本の思惑が異なるような気がするのは私だけでしょうか?
北朝鮮と韓国は、同一民族という関係性の中でともにあることを前提に、核ミサイルの問題について話合いをもって解決しようとしていますが、日本はそこに、米国(トランプ)に追従しもしくはそれ以上に圧力をかけよ、とヒステリックに迫っているような気がします。
どうも隣の国々に対して、きちんとした理解が及んでいないような気がしています。みなさんはどう思われますでしょうか。
同様な状況が、『帝国の暗闇から』が書かれた時代にもあったようです。
次回は、『帝国の暗闇から』をさらに読み進めます。
第44回 2017年12月25日
こんにちは、岡庭野野花です。
今日も「帝国の暗闇から」を読み進めます。
「9.11」の頃について書いている箇所を読み進めています。
イラク戦争の陰謀節が流れはじめました。
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P51
第3節 アメリカはヒトラーを「必要」とした
そして、ビン・ラディンも?
「民主主義VSファシズム」という対立図式があり、その前者が勝利したというのが第二次世界大戦に勝った側の総括だった。
それは、第二次大戦に勝利国米・英・ソ・仏・中が集って、敗戦国に降伏を勧めたり、戦後の行政を各国で相談した年の名前である。転じて戦後の世界の基本姿勢をそう呼ぶようになった。敗れた枢軸側がファシズムを唱え、勝った側、すなわち戦後世界を動かした側が民主主義
建て前としたため、戦後世界の支配文化は民主主義を軸にすることとなった。
だが、第二次世界大戦直前、スペインの民主主義の危機に、義勇軍としての参戦にさえ歯止めを掛けるなど連合国側にも疑問は多いし、独ソ不可侵条約の締結におけるように民主主義はマキャベリズム優先の中で踏みにじられる等、勝者の側の偽善の匂いは歴然としている。それはやがて軸が反共・冷戦に振れるにつれ、ますます虚偽の建て前の感を深めていった。
それに民主主義は絶対の正義とされたため、高まりつつある第三世界の、正当な権利である固有の宗教や民族意識に対して「抑圧」となった。これら多くの基本的な疑問を再検証するべきなのに、戦後左翼を中心に理論家はそれを絶対化することに熱心であった、と批判されても仕方がない。こんにち、あらゆる「戦後処分」を許さないと公言するわたしが、なおそういうのである。
P53
だから、逆説的にこうなる。民主主義は大事な基本理念であり、尊重されるべき精神である。だから、それを虚構として利用し、世界中にヤルタ・ポツダム体制を支配機構として押し付けたアメリカは、民主主義の名によってこそ糾弾されるべきなのである。
このあとに思いを致すなら、それがついには「正義の味方アメリカVS悪の枢軸」という、いかにもジョージ・ブッシュらしい幼稚な図式に単純化するとき、まさに支配原理(つまりアメリカを中心とした虚構)は、半世紀を隔てて内包する破綻をあらわにするだろう。
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野野花:
少し長くなりましたが、ここは一気に読まずにはいられませんね。
A:
2004年に発行された本だとは思えないです。
野野花:
アメリカの有力誌『ザ・アトランティック』(10月25日付)は、「考えられないこと(The Unthinkable)」と題する記事を掲載しました。
A:
私も手にしました。
B:
どんな記事だったのですか? どんなことが考えられないのでしょう?
A:
「北朝鮮危機はエスカレートしており、“核戦争の可能性”は単なる言葉のやり取りではなく、現実的な議論になっている」と、ワシントンの雰囲気を解説していました。
北朝鮮のミサイル・核開発を中止しないことが、今の北朝鮮危機の原因ではあることは間違えありませんが、経済制裁・「テロ支援国家」の再指定、国連での閣僚級会合での様子などを見ていると少しずつ開戦へとじわじわと進んでいるのではないかと思います。
野野花:
その通りです。
この状況において、私たちはどのように物事を捉えるべきかを
あらためて考えなくちゃと思います。
年明けから、本書を続けて読み解いていきましょう。
いつもブログを読んでくださいまして、ありがとうございます。
どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。
第43回 2017年12月18日
こんにちは、岡庭野野花です。
心ざわつくニュースがまたもや飛び込んできました。
北朝鮮をめぐる国連の安全保障理事会の閣僚級会合に、北朝鮮の慈成男(チャ・ソンナム)国連大使が出席したというトピックスです。
今日はまずこのニュースを分析してみたいと思います。
A:
はい。私も心ざわつきました。
アメリカのティラーソン国務長官は、北朝鮮のチャ・ソンナム国連大使が「朝鮮半島情勢緊張の責任は米国にある」と主張したことに直接反論し他のですから。北朝鮮とアメリカと直接向き合う異例の展開になっていきましたね。
B:
ティラーソン長官は、情勢緊張に関しては北朝鮮のみに責任があると述べて、北朝鮮との関係はますます緊迫を増したと思えます。
A:
この閣僚級会合、議長国の日本が呼びかけましたが、会合の冒頭でグテレス事務総長は、朝鮮半島情勢を「今日の世界で最も緊迫し危険な安全保障問題となっている」と指摘しました。
緊張激化による偶発的な軍事衝突の危険性を繰り返し訴えて、さらに当事者間の「対話チャンネル」確立の重要性も強調していました。
B:
北朝鮮に対して安保理決議を履行して、核・ミサイル開発を即時停止するよう求めてたところ、米国を念頭に「過剰な自信や危険なレトリック」を慎むよう呼びかけたといわれます。
A:
「日本は、制裁履行に困難を抱える国々には支援する用意がある」と演説しました。そして、北朝鮮労働者の就労禁止措置などで打撃を受ける国に対して支援をする考えを示唆。
B:
さらに、北朝鮮のサイバー攻撃や生物化学兵器などの脅威に対応するため「国際ネットワーク強化の必要がある」と訴えたそうですね。
野野花:
さて、少し時計を戻してみましょう。
この閣僚会議の前、11月20日には北朝鮮に対して「テロ支援国家」が再指定されました。北朝鮮のテロ支援国家指定は、ブッシュ・ジュニア政権末期の2008年に解除されていたのですが、このことが北朝鮮の核開発が加速した面もあるでしょう。
事実、発射実験や核実験がくり返され、08年よりも状況は悪化しています。
テロ支援国家指定が解除されたままでは、アメリカが独自の経済制裁を行う根拠も得られません。
ですから、トランプ政権はテロ支援国家に再指定して、北朝鮮に揺さぶりをかけたのです。今の北朝鮮の問題は、確かに日々私たちの脅威になっていますが、アメリカによる北朝鮮へのあおりこそが、戦争へのカウントダウンという状況を作り出しているのです。
ここで私が申し伝えたいことは、(父もきっと同じことを書くと思うのですが)この状況は、真珠湾攻撃〜日米開戦〜のちの第二次世界大戦参戦に似ているということです。今でも、真珠湾攻撃陰謀説が語られますが、当時アメリカにはモンロー主義に代表される孤立主義の伝統がありました。
ルーズベルトは選挙戦において公約したのは、
「あなたたちの子供を戦場には出さない」ことでした。
ヨーロッパで第二次世界大戦が始まっても中立の立場をとっていたアメリカにとって、真珠湾奇襲攻撃が、アメリカが連合国に加わって第二次世界大戦・太平洋戦争に参戦するきっかけを作り出したといわれています。
国民に第二次世界大戦参戦を納得させる機会をうかがっていたルーズベルトとその閣僚にとって真珠湾攻撃まえの日米交渉も日本に譲歩する考えはなく、追い込んで戦争に持ち込みたいのが本音であったと言われています。
事前に真珠湾攻撃の情報を知っていたにも関わらず、それを黙認することによって、アメリカの参戦を国民に認めさせた」とする真珠湾攻撃陰謀説は開戦後70年以上たっても、繰り返し論議されています。
日々のニュースをフックに、過去を手繰り寄せる日々です。
そんな時に、父の著書はバイブルとなり、今こそ読むべきと思わずにはいられません。
階段を一歩づつ登るように、父の著書を読み続けています。
第42回 2017年12月11日
こんにちは、岡庭野野花です。
師走に入って、気になるニュースが飛び込んできました。
A:
トランプ大統領の発言ですね。
B:
なんと、エルサレムをイスラエルの首都にしてアメリカ大使館を置くと言い、米議会は1995年にイスラエルの米大使館移転を求める法律を制定……
A:
歴代米政権は「安全保障上の問題」として、執行を大統領令で延期してきましたが、トランプは自分の支持基盤をつなぎとめるため、選挙公約を守るのパフォーマンスとしてエルサレムの首都認定を行なったのでしょう。
B:
これもまた「9.11」以降の社会状況を引きずるものかもしれません。
野野花:
とにかく、北朝鮮とは一色即発の緊張状態です。世界の平和が、一国の大統領によってバランスを崩し、一気に不安定な方向へと向かい始めています。
不安定な危うさは、「9.11」 の時より増しているように感じます。
『帝国の暗闇から』を読み進めると、「9.11」の時の状況が綴られていました。
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P 14
哲学者スラヴォイ・ジジェクもまた、「9.11テロ」を体験して、その直後『「テロル」と戦争』と一気に書き下ろした。その原題『<現実界>の砂漠へようこそ!』は、映画『マトリックス』のセリフから取られている。
同書の中で、たとえば《然り----攻撃者たちの文化は死の病的文化である。それは暴力的な死に己の生の頂点的な充足を見いだす態度ともいえるだろう》(長原豊訳)というように、いくら逆説をふんだんに含むとはいえ、ジジェクもまた、テロに何らかの可能性を認めるわけではない。だが、それを「悪」の一言で済ませ、設えられた「悪」の正当化へ連続させるような「政治」とは決定的に異なるのである。
それはひとつは、本来ユダヤ教徒の一右翼勢力にすぎないイスラエルは、このテロを契機として高まる自己絶対化の風潮の得意がっていると、こんどは伝統的な反ユダヤ主義を掻き立てることになるだろうという指摘である。
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野野花:
前回、「9.11」を発端とするイラク戦争は、2011年「イラク戦争終結宣言」をオバマ前大統領が出して終結したとお話をしました。
でもこれは、大統領の支持基盤である保守派やキリスト教福音派への受けを狙っての宣言だったようです。
A:
今回の宣言に対して、国際社会からの非難は大きいです。パレスチナ解放戦線のアッバス議長の立場をなくして、アメリカの最も重要なアラブの友好国は、自分たちの助言を無視したトランプの決断のおかげで、お尻に火が付くことになりました。
B:
トランプの決定は、中東に駐在するアメリカの外交官や民間人の安全も脅かすでしょう。中東が一気に不安定化しかねない状態です。本当に心配。
A:
一方で9日にイラク軍は、イスラム原理主義の過激組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦が完了して、「イラク全土をISから解放した」と宣言しました。「原理主義」という考え方は、日本人にはまったく馴染みはないけれど、決してイスラムに限ったものではないのです。
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『帝国の暗闇から』を読み進めましょう。
P118からの「第4章 左翼原理主義」は、特に興味深い内容です。
先年のアフガン侵略で、アメリカが(そしてそれに追随する日本のマスコミが)盛大に罵倒したのがイスラム原理主義だった。女性が肌をわずかにでも出したり、高等教育を受ける権利や、職業に就くことも禁じられているという事実は、確かに彼らが民主主義に反する分かりやすい事例であり、盛んにその点でのプロパガンダがなされた。
だが、第三世界への侵略と支配を積極的に推し進めるブッシュ・ネオコン政権は、みずからは妊娠中絶に反対し、進化論を否定したり、白人至上を主張する野蛮なキリスト教原理主義者をその中心的な支持基盤にしているのだから呆れる。誰にとっても愚者であることが明らかなブッシュが、それでも権力を持ち得るのも、この信者6000万人ともいわれるアメリカの超右派=原理主義キリスト教のお陰なのだ。
坪内隆彦の優れた問題意識を持つ『キリスト教原理主義』は、1997年3月に刊行されているが、2004年段階でのイラク侵略戦争の本質をすでにいいあてている。
彼はクリントンを沈黙させた右派政治家に触れて《ヘルムズの国連批判はブキャナンの国連批判とぴったりと共鳴している。ブキャナンは「国連のグローバリズムとそれにもとづく新世界秩序はアメリカの主権を脅かすだけだ」と断言している。
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野野花:
私たちはトランプの激しい言動のみにとらわれがちですが、共和党の大きな強力な支持基盤には世界を単純な善悪で塗り分けて理解をしてしまうキリスト教原理主義があることを今改めて理解するべきです。
こうした一方的な価値観で「善」「悪」で二分されることによる分断が起こっていることも。
次回は、このようなことも踏まえて、戦争がどのように引き起こされるのかを『帝国の暗闇から』から紐解きたいです。
赤いツバキに冬を感じています。
第41回 2017年11月27日
こんにちは、岡庭野野花です。
今日から『帝国の暗闇から』を読み進めていきます。
父がこの本を書いたのは2004年のことですので、まずはその前後を振り返ってみましょう。
A:
2001年9月11日に、のちに「9・11(きゅーいちいち)テロ」と呼ばれる同時多発テロが起こりました。このテロ事件を契機にアフガニスタン侵攻を進め、さらに2002年、国際テロ組織とならず者国家と断じた悪の枢軸(イラク、イラン、北朝鮮)との戦いを国家戦略としました。
「アメリカの防衛のためには、予防的な措置と時には先制攻撃が必要」の声が強まります。
B:
それで、アメリカ合衆国は、イラクに対して大量破壊兵器を隠し持っているという疑惑を理由に、2003年3月20日、イギリス、オーストラリアと、工兵部隊を派遣したポーランド等が加わる有志連合で、イラク武装解除問題の大量破壊兵器保持における進展義務違反を理由とする『イラクの自由作戦』の名の下に、イラク戦争に踏み切っていくわけですね。
A:
5月、ジョージ・W・ブッシュにより「大規模戦闘終結宣言」が一方的に出されましたが、イラク国内でアメリカが指摘した大量破壊兵器が見つけられない。また、イラクの治安悪化が問題になって、集結宣言翌日から米軍撤退後のイラク単独での治安維持に向けた『新しい夜明け作戦』が始まりました。
B:
長い年月が流れて、2011年12月、ようやくアメリカ軍のイラクからの完全撤退。
「イラク戦争終結宣言」がオバマ米大統領により出されて、イラク戦争が終結します。
A:
戦争を始めるのは簡単ですが、終結するのには本当に時間がかかります。
今、北朝鮮とアメリカは、まさに一足即発の状態。ミサイルがアメリカに届くようなことになれば、その報復を理由に戦争を仕掛けることになりかねません。もし戦争になったなら、終結するためにはかなりの時間がかかるでしょう。
B:
北朝鮮とアメリカの関係を横目で見ている場合ではないのです。他国のことではなく、巻き込まれるどころか主体的に関わっていくように思えてなりません。
野野花:
『帝国の暗闇から』は、まさに2003年にジョージ・W・ブッシュが大規模戦闘終結宣言を出した以後、イラク戦争の事実上の帰結がなされないそうした状況の時に書かれた本です。
なので、今の状況と9・11前後のアメリカの状況とがもしかして似ているのではないかいう仮定が生まれますね。
そもそも、「9・11テロ」はなぜ起きたのでしょう? その理由としては
1.戦後、中東(アラブ系の国が多い)の石油資本をめぐって、アメリカの石油メジャー利権のほとんどを握ってしまったこと。
2.湾岸戦争で、サウジアラビア侵攻を狙うイランの抑止力として、イスラムの2大聖地のあるサウジアラビアに米軍を駐屯させたこと
3.イスラム法に厳格に従うべきだとするイスラム原理主義組織にとっては、アメリカは金銭と快楽を追求する腐敗した神に背く国だと考えられていたこととされていますが、未だブッシュによる陰謀説もながれはっきりしていません。
今もイスラム国が終焉を迎えているといわれながら、世界各国で続くテロは続いています。これは9・11から今も続いています。9・11 を考えることは今北朝鮮問題と対峙している日本を考えることになりそうです。
本書の「第1節 アメリカを封印せよ」の冒頭、父はこう書きはじめています。
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P.13
いうまでもなく、われわれもまた西欧社会の一員であり、収奪するものである。だから「われわれ」にも根源的な問いを突きつけた2001年の「9・11テロ」は、しつこく考えられなければならない原点である。
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収奪とは「奪い取ること。強制的に取り上げること」「占領軍が土地を収奪する」を意味します。
つまり、私たちは西欧社会の一員であり、グローバルにみた時には他の国のものを奪い取っているという立場います。そうした私たちが「9・11テロ」から始まる今どのように世界と向き合っていくのかを、本書を読みながら考えていきます。
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はじめに
P5
各地でアメリカは、独裁や王政を作り、それと手を結ぶことで、石油の「安定供給」を計ってきた。今の形式にせよ、自らの意志を曲がりなりに持つ民主政権を立てたところで、アメリカはそれを使い切れない。
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さてさて、次回からは『帝国の暗闇から』を深く読んでいきます。
古本屋さんで買ったら、サインがありました。驚きました。
第40回 2017年11月6日
こんにちは、岡庭野野花です。
メディアでは、「バブル景気」を超えて、戦後3番目に息の長い「好景気」になっていると言われています。でも、実質賃金の変化を見ると「いざなぎ景気」の頃は1年当たり8.2%上昇。「バブル景気」の頃は1.5%の上昇。しかし、今回の「景気回復」では増えるどころか0.6%減少しています。
A:
え!? そうなんですね。では、いったいこれのどこをとって景気がいいと言っているのでしょうか?
野野花:
Aさんも、まんまと操作されているんですよ。父はとうの昔に多くのからくりに気づいて、「かくもさまざまな言語操作」を書いて警笛を鳴らして
いたんだと、今さらながら感じています。
A:
そういえば、経済発展を続ける一方で賃金は下がり続いているじゃないですか。やがて国民の年収は300万円程度になるとも言われています。
B:
私も気になっていました。実際に1990年以降は国民の年収は下がり続けていて、平成26年には年収300万円以下の人口が全給与所得者の4割を占めているという結果だそう。
A:
GDPは、日本は世界第3位ですが、OECD(経済協力開発機構)の貧困率の調査では、日本は発展途上国と同等かそれ以下の、世界第4位となっているのです。
B:
わ〜! びっくりです。貧困は確実に日本に広がっているんだ。ということは、メディアの情報ってあまりにも現実と乖離しているじゃないですか!
野野花:
父の著書を通じて、私たちはメディアからの情報のとらえ方を今一度考えなければならないと、心から思います。そして、再度共生的(誰もがともに生きていける)社会の創造の必要性を感じていただきたいと願います。
先々月から「かくもさまざまな言語操作」を読んできましたが、最後にあとがきを一緒に読んでください。
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p283
あとがき
わたしはなにも、特別な情報の入手先をもっているわけではない。読んでいただければはっきりしているように、一人の市民たる情報の受け手として、それを読み込み、読み替えたのである。また「さまざまな言論操作」という本書の課題は、なにかの大事件について、その裏話はじつはこうなのだ、と言った類のことではない。
ごく日常的な報道情報こそが、総体として言論操作なのであり、権力を支えているということが、ここでの課題なのである。
危機がかしましく喧伝されている。だが、浮き足立つことはない。それは「彼ら」の危機なのだ。一党独裁体制の危機を、一党独裁のご都合主義で立て直すために、われわれまっとうな市民をまきこもうとする陰謀にほかならないのだ。このことを改めて確認しておきたい。 (1998年2月7日)
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さて、米国史上最低支持率向かっていると言われているトランプ大統領が来日しました。父の著作の多くは史上最低支持率であったブッシュ大統領の当時に書かれているものですが、今の米国や日本の状況は、その当時から引きずっていると思われます。
次回からは、「帝国の暗闇から」という著作から、米国と日本の関係を再度紐解いていきます。