復刻『週刊 岡庭昇』

〜岡庭昇を因数分解する〜

第43回 2017年12月18日

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こんにちは、岡庭野野花です。

 

心ざわつくニュースがまたもや飛び込んできました。

北朝鮮をめぐる国連の安全保障理事会の閣僚級会合に、北朝鮮の慈成男(チャ・ソンナム)国連大使が出席したというトピックスです。

今日はまずこのニュースを分析してみたいと思います。

 

A

はい。私も心ざわつきました。

アメリカのティラーソン国務長官は、北朝鮮のチャ・ソンナム国連大使が「朝鮮半島情勢緊張の責任は米国にある」と主張したことに直接反論し他のですから。北朝鮮とアメリカと直接向き合う異例の展開になっていきましたね。

 

B

ティラーソン長官は、情勢緊張に関しては北朝鮮のみに責任があると述べて、北朝鮮との関係はますます緊迫を増したと思えます。

 

A

この閣僚級会合、議長国の日本が呼びかけましたが、会合の冒頭でグテレス事務総長は、朝鮮半島情勢を「今日の世界で最も緊迫し危険な安全保障問題となっている」と指摘しました。

緊張激化による偶発的な軍事衝突の危険性を繰り返し訴えて、さらに当事者間の「対話チャンネル」確立の重要性も強調していました。

 

B

北朝鮮に対して安保理決議を履行して、核・ミサイル開発を即時停止するよう求めてたところ、米国を念頭に「過剰な自信や危険なレトリック」を慎むよう呼びかけたといわれます。

 

A

そうした中、河野氏安保理制裁の履行に向けて

「日本は、制裁履行に困難を抱える国々には支援する用意がある」と演説しました。そして、北朝鮮労働者の就労禁止措置などで打撃を受ける国に対して支援をする考えを示唆。

 

B

さらに、北朝鮮サイバー攻撃や生物化学兵器などの脅威に対応するため「国際ネットワーク強化の必要がある」と訴えたそうですね。

 

 

野野花:

さて、少し時計を戻してみましょう。

この閣僚会議の前、1120日には北朝鮮に対して「テロ支援国家」が再指定されました。北朝鮮テロ支援国家指定は、ブッシュ・ジュニア政権末期の2008年に解除されていたのですが、このことが北朝鮮の核開発が加速した面もあるでしょう。

事実、発射実験や核実験がくり返され、08年よりも状況は悪化しています。

テロ支援国家指定が解除されたままでは、アメリカが独自の経済制裁を行う根拠も得られません。

ですから、トランプ政権はテロ支援国家に再指定して、北朝鮮に揺さぶりをかけたのです。今の北朝鮮の問題は、確かに日々私たちの脅威になっていますが、アメリカによる北朝鮮へのあおりこそが、戦争へのカウントダウンという状況を作り出しているのです。

 

ここで私が申し伝えたいことは、(父もきっと同じことを書くと思うのですが)この状況は、真珠湾攻撃〜日米開戦〜のちの第二次世界大戦参戦に似ているということです。今でも、真珠湾攻撃陰謀説が語られますが、アメリカにはモンロに代表される孤立主伝統がありました。

ズベルトは選挙戦において公約したのは、

「あなたたちの子供を戦場には出さない」ことでした。

 

ロッパで第二次世界大が始まっても中立の立場をとっていたアメリカにとって、真珠湾奇襲攻が、アメリカが合国に加わって第二次世界大太平洋に参するきっかけを作り出したといわれています。

 

国民に第二次世界大戦参戦を納得させる機会をうかがっていたルーズベルトとその閣僚にとって真珠湾攻撃まえの日米交渉も日本に譲歩する考えはなく、追い込んで戦争に持ち込みたいのが本音であったと言われています。

事前に真珠湾攻撃の情報を知っていたにも関わらず、それを黙認することによって、アメリカの参を国民にめさせた」とする真珠湾撃陰謀説開戦70年以上たっても、り返し論議されています。

 

日々のニュースをフックに、過去を手繰り寄せる日々です。

そんな時に、父の著書はバイブルとなり、今こそ読むべきと思わずにはいられません。

 

階段を一歩づつ登るように、父の著書を読み続けています。

 

 

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第42回 2017年12月11日

 

こんにちは、岡庭野野花です。

 

師走に入って、気になるニュースが飛び込んできました。

 

A

トランプ大統領の発言ですね。

 

B

なんと、エルサレムイスラエルの首都にしてアメリカ大使館を置くと言い、米議会は1995年にイスラエルの米大使館移転を求める法律を制定……

 

A

歴代米政権は「安全保障上の問題」として、執行を大統領令で延期してきましたが、トランプは自分の支持基盤をつなぎとめるため、選挙公約を守るのパフォーマンスとしてエルサレムの首都認定を行なったのでしょう。

 

B

これもまた「9.11」以降の社会状況を引きずるものかもしれません。

 

野野花:

とにかく、北朝鮮とは一色即発の緊張状態です。世界の平和が、一国の大統領によってバランスを崩し、一気に不安定な方向へと向かい始めています。

不安定な危うさは、「9.11 の時より増しているように感じます。

 

『帝国の暗闇から』を読み進めると、「9.11」の時の状況が綴られていました。

 

+++ 

 P 14

哲学者スラヴォイ・ジジェクもまた、「9.11テロ」を体験して、その直後『「テロル」と戦争』と一気に書き下ろした。その原題『<現実界>の砂漠へようこそ!』は、映画『マトリックス』のセリフから取られている。

 同書の中で、たとえば《然り----攻撃者たちの文化は死の病的文化である。それは暴力的な死に己の生の頂点的な充足を見いだす態度ともいえるだろう》(長原豊訳)というように、いくら逆説をふんだんに含むとはいえ、ジジェクもまた、テロに何らかの可能性を認めるわけではない。だが、それを「悪」の一言で済ませ、設えられた「悪」の正当化へ連続させるような「政治」とは決定的に異なるのである。

 それはひとつは、本来ユダヤ教徒の一右翼勢力にすぎないイスラエルは、このテロを契機として高まる自己絶対化の風潮の得意がっていると、こんどは伝統的な反ユダヤ主義を掻き立てることになるだろうという指摘である。

 

+++

 

野野花:

前回、「9.11」を発端とするイラク戦争は、2011年「イラク戦争終結宣言」をオバマ前大統領が出して終結したとお話をしました。

でもこれは、大統領の支持基盤である保守派やキリスト教福音派への受けを狙っての宣言だったようです。

 

A

今回の宣言に対して、国際社会からの非難は大きいです。パレスチナ解放戦線のアッバス議長の立場をなくして、アメリカの最も重要なアラブの友好国は、自分たちの助言を無視したトランプの決断のおかげで、お尻に火が付くことになりました。

 

B

トランプの決定は、中東に駐在するアメリカの外交官や民間人の安全も脅かすでしょう。中東が一気に不安定化しかねない状態です。本当に心配。

 

A

一方で9日にイラク軍は、イスラム原理主義過激組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦が完了して、「イラク全土をISから解放した」と宣言しました。「原理主義」という考え方は、日本人にはまったく馴染みはないけれど、決してイスラムに限ったものではないのです。

 

+++

『帝国の暗闇から』を読み進めましょう。

P118からの「第4章 左翼原理主義」は、特に興味深い内容です。

 先年のアフガン侵略で、アメリカが(そしてそれに追随する日本のマスコミが)盛大に罵倒したのがイスラム原理主義だった。女性が肌をわずかにでも出したり、高等教育を受ける権利や、職業に就くことも禁じられているという事実は、確かに彼らが民主主義に反する分かりやすい事例であり、盛んにその点でのプロパガンダがなされた。

 

 キリスト教原理主義

 

 だが、第三世界への侵略と支配を積極的に推し進めるブッシュ・ネオコン政権は、みずからは妊娠中絶に反対し、進化論を否定したり、白人至上を主張する野蛮なキリスト教原理主義者をその中心的な支持基盤にしているのだから呆れる。誰にとっても愚者であることが明らかなブッシュが、それでも権力を持ち得るのも、この信者6000万人ともいわれるアメリカの超右派=原理主義キリスト教のお陰なのだ。

 

 坪内隆彦の優れた問題意識を持つ『キリスト教原理主義』は、19973月に刊行されているが、2004年段階でのイラク侵略戦争の本質をすでにいいあてている。

 彼はクリントンを沈黙させた右派政治家に触れて《ヘルムズの国連批判はブキャナンの国連批判とぴったりと共鳴している。ブキャナンは「国連のグローバリズムとそれにもとづく新世界秩序はアメリカの主権を脅かすだけだ」と断言している。

 

+++

 

野野花:

私たちはトランプの激しい言動のみにとらわれがちですが、共和党の大きな強力な支持基盤には世界を単純な善悪で塗り分けて理解をしてしまうキリスト教原理主義があることを今改めて理解するべきです。

こうした一方的な価値観で「善」「悪」で二分されることによる分断が起こっていることも。

 

次回は、このようなことも踏まえて、戦争がどのように引き起こされるのかを『帝国の暗闇から』から紐解きたいです。

 

赤いツバキに冬を感じています。

 

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第41回 2017年11月27日

こんにちは、岡庭野野花です。

 

今日から『帝国の暗闇から』を読み進めていきます。

父がこの本を書いたのは2004年のことですので、まずはその前後を振り返ってみましょう。

 

A

2001911日に、のちに「911(きゅーいちいち)テロ」と呼ばれる同時多発テロが起こりました。このテロ事件を契機にアフガニスタン侵攻を進め、さらに2002年、国際テロ組織ならず者国家と断じた悪の枢軸イラクイラン北朝鮮)との戦いを国家戦略としました。

「アメリカの防衛のためには、予防的な措置と時には先制攻撃が必要」の声が強まります。

 

B

それで、アメリカ合衆国は、イラクに対して大量破壊兵器を隠し持っているという疑惑を理由に、2003320イギリスストラリアと、工兵部を派遣したランド等が加わる有志で、イラク武装解除問題大量破兵器保持における義務違反を理由とする『イラクの自由作』の名の下に、イラク戦争に踏み切っていくわけですね。

 

A

5月、ジョージ・W・ブッシュにより「大規模戦闘終結宣言」が一方的に出されましたが、イラク国内でアメリカが指摘した大量破壊兵器が見つけられない。また、イラクの治安悪化が問題になって、集結宣言翌日から米軍撤退後のイラク単独での治安維持に向けた『新しい夜明け作戦』が始まりました。

 

B

長い年月が流れて、201112月、ようやくアメリカイラクからの完全撤退。

イラク終結宣言」がオバマ米大統領により出されて、イラク戦争終結します

 

A

戦争を始めるのは簡単ですが、終結するのには本当に時間がかかります。

今、北朝鮮とアメリカは、まさに一足即発の状態。ミサイルがアメリカに届くようなことになれば、その報復を理由に戦争を仕掛けることになりかねません。もし戦争になったなら、終結するためにはかなりの時間がかかるでしょう。

 

B

北朝鮮とアメリカの関係を横目で見ている場合ではないのです。他国のことではなく、巻き込まれるどころか主体的に関わっていくように思えてなりません。

 

野野花:

『帝国の暗闇から』は、まさに2003年にジョージ・W・ブッシュが大規模戦闘終結宣言を出した以後、イラク戦争の事実上の帰結がなされないそうした状況の時に書かれた本です。

なので、今の状況と911前後のアメリカの状況とがもしかして似ているのではないかいう仮定が生まれますね。

 

そもそも、「911テロ」はなぜ起きたのでしょう? その理由としては

1.戦後、中東(アラブ系の国が多い)の石油資本をめぐって、アメリカの石油メジャー利権のほとんどを握ってしまったこと。
2.
湾岸戦争で、サウジアラビア侵攻を狙うイランの抑止力として、イスラム2大聖地のあるサウジアラビアに米軍を駐屯させたこと

3.イスラム法に厳格に従うべきだとするイスラム原理主義組織にとっては、アメリカは金銭と快楽を追求する腐敗した神に背く国だと考えられていたこととされていますが、未だブッシュによる陰謀説もながれはっきりしていません。

今もイスラム国が終焉を迎えているといわれながら、世界各国で続くテロは続いています。これは911から今も続いています。911 を考えることは今北朝鮮問題と対峙している日本を考えることになりそうです。

 

本書の「第1節 アメリカを封印せよ」の冒頭、父はこう書きはじめています。

 

+++

P.13 

 いうまでもなく、われわれもまた西欧社会の一員であり、収奪するものである。だから「われわれ」にも根源的な問いを突きつけた2001年の「911テロ」は、しつこく考えられなければならない原点である。

+++

 

収奪とはい取ること。制的に取り上げること」「占領軍が土地を収奪する」を意味します。

つまり、私たちは西欧社会の一員であり、グローバルにみた時には他の国のものを奪い取っているという立場います。そうした私たちが「911テロ」から始まる今どのように世界と向き合っていくのかを、本書を読みながら考えていきます。   

 

+++

はじめに

P5

各地でアメリカは、独裁や王政を作り、それと手を結ぶことで、石油の「安定供給」を計ってきた。今の形式にせよ、自らの意志を曲がりなりに持つ民主政権を立てたところで、アメリカはそれを使い切れない。

 

+++

 

さてさて、次回からは『帝国の暗闇から』を深く読んでいきます。

 

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古本屋さんで買ったら、サインがありました。驚きました。

第40回 2017年11月6日

こんにちは、岡庭野野花です。

 

メディアでは、「バブル景気」を超えて、戦後3番目に息の長い「好景気」になっていると言われています。でも、実質賃金の変化を見ると「いざなぎ景気」の頃は1年当たり8.2%上昇。「バブル景気」の頃は1.5%の上昇。しかし、今回の「景気回復」では増えるどころか0.6%減少しています。

 

A:

え!? そうなんですね。では、いったいこれのどこをとって景気がいいと言っているのでしょうか?

 

野野花:

Aさんも、まんまと操作されているんですよ。父はとうの昔に多くのからくりに気づいて、「かくもさまざまな言語操作」を書いて警笛を鳴らして

いたんだと、今さらながら感じています。

 

A:

そういえば、経済発展を続ける一方で賃金は下がり続いているじゃないですか。やがて国民の年収は300万円程度になるとも言われています。

B:

私も気になっていました。実際に1990年以降は国民の年収は下がり続けていて、平成26年には年収300万円以下の人口が全給与所得者の4を占めているという結果だそう。

A:

GDPは、日本は世界第3位ですが、OECD(経済協力開発機構)貧困率の調査では、日本は発展途上国と同等かそれ以下の、世界第4となっているのです。

B:

わ〜! びっくりです。貧困は確実に日本に広がっているんだ。ということは、メディアの情報ってあまりにも現実と乖離しているじゃないですか!

野野花:

父の著書を通じて、私たちはメディアからの情報のとらえ方を今一度考えなければならないと、心から思います。そして、再度共生的(誰もがともに生きていける)社会の創造の必要性を感じていただきたいと願います。

先々月から「かくもさまざまな言語操作」を読んできましたが、最後にあとがきを一緒に読んでください。

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p283

あとがき

 わたしはなにも、特別な情報の入手先をもっているわけではない。読んでいただければはっきりしているように、一人の市民たる情報の受け手として、それを読み込み、読み替えたのである。また「さまざまな言論操作」という本書の課題は、なにかの大事件について、その裏話はじつはこうなのだ、と言った類のことではない。

 ごく日常的な報道情報こそが、総体として言論操作なのであり、権力を支えているということが、ここでの課題なのである。

 危機がかしましく喧伝されている。だが、浮き足立つことはない。それは「彼ら」の危機なのだ。一党独裁体制の危機を、一党独裁のご都合主義で立て直すために、われわれまっとうな市民をまきこもうとする陰謀にほかならないのだ。このことを改めて確認しておきたい。    (19982月7日)

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さて、米国史上最低支持率向かっていると言われているトランプ大統領が来日しました。父の著作の多くは史上最低支持率であったブッシュ大統領の当時に書かれているものですが、今の米国や日本の状況は、その当時から引きずっていると思われます。

次回からは、「帝国の暗闇から」という著作から、米国と日本の関係を再度紐解いていきます。

 

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第39回 2017年10月30日

こんにちは、岡庭野野花です。

 

すんなりと、第4安倍内閣がスタートしました。

 

A:

安倍さんは、「国民の意見を謙虚に受け止める」とさらりと言い、与党側は当初、特別国会を8日間で閉じる予定で、臨時国会も開かない方針です。

 

B:

そればかりか、慣例的に野党に多く配分されている質問時間を制限する案も突如打ち出したり……

野党のオウンゴールで勝ったにすぎないのに、国民の信任を受けたとして暴走しそうな気配です。私たりは、しっかり監視する必要があります。

 

A:

今回の選挙は、保守リベラル論争から、民主主義について再定義するべきいい機会だと思ったのですが、終わってみるとますます、一党独裁が色濃くなってしまいました。

 

野野花:

でもここでは、先週からの課題として「民主主義をどう考えるのか」を、父の著作からピックアップして考えていきます。

 

A:

自民党が支持された理由のひとつに「自民党の経済政策のおかげで景気が良い」があげらてれます。

 

B:

このまま自民党政権が続けば、好景気が続くはずと思った人が、日本に大量にいたことが、自民党圧勝に繋がったんですね。ふぅ。

 

野野花:

ため息が出ますが。父の「かくもさまざまな言語操作」から、父が景気について語っている章を読んでみようと思います。

 

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P238

「好景気」は「いいこと」か

 

 ひとくちに好景気とか不景気とか言う。生活の基本にかかわる問題である。わたしだって、景気がなんとか立ち直りそうだと聞くと、やはりほっとする。だれしもそれが本音ではあるだろう。

 それはまったくそうなのだが、この場合、経済活動が市民の生活にとって「いい状態」であることを表現することばとして「好景気」は使われている。逆に言えば、「経済が市民にとって望ましい状態である」ことを表現するのに、ほかに適当なことばがないから、わたしたちはそれを好景気と表現する。しかしここに、ほんとうは重要な問題があるように思われる。

 あらためて考えなおさなければならないことなのだが、ほんとうに「好景気」はまた、わたしたちの経済が望ましい状態であることを示す唯一の、そして十全の表現なのだろうか。

 じつは好景気と言う表現には、ふたつのニュアンスがある。わたしたちの生活上のごく一般的な表現と、官僚やエコノミストが使う、いわばテクニカル・タームとしての側面である。テクニカル・タームというのは専門用語という意味だが、この場合は業界用語と言っておきたい。

 わたしたちが好景気と言うとき、当然、生活から発想している。しかしそれは、テクニカル・タームであるときには、国家や産業界の立場から経済を捉えている。

「専門家」は、国家や産業界の立場からのみ、「好景気」の意味を捉えている。この「のみ」に、じつは問題がある。国家や産業界のためであれば、同時に生活のためであると信じるには、わたしたちお人好しの市民も、十分に苦い体験をしたのではないか。わたしたちは好景気という同じことばで、じつはわたしたちの生活が、ほんらい望んいるのとは違うものに期待している。このからくりに気がつかなければならないし、あえて言えば反省する必要もある。

 

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続く。

 

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ため息じゃなくて、高い青空の下で深呼吸したいですね。

第38回 2017年10月23日

こんにちは、岡庭野野花です。

 

 衆院選が終わりました。

 超大型台風が北上するなか行われたこともあり、史上2番目に低い投票率でした。今日はこの衆院選を振り返ってみます。

 

A:

突然、大義のないまま始まった衆院選。小池さんがつくった「希望の党」は、台風の目にはならずに、野党の崩壊を招いて、終わってみたら自民の圧勝。

安倍一強に自信をつける結果となりました。

ますます独裁が進んでいくことになるのでしょうか?

テレビでは野党の再結集などの情報が報じられています。

 

B:

総選挙にかかる費用は、800億円です2週間にわたってテレビで流れる情報は情緒的で、同じコメンテータが都合のいい話を垂れ流していたとしか感じませんでした。

正直、今回ほど、お金と時間と情報の無駄を感じ、徒労であったと感じたのは私だけでしょうか?

安倍自民党の支持者に若い層がいると言われています。

二大政党制にもっとも近づいたのは民主党権時代だけども、それがうまくいかなかった、という認識が世の中にまったことで、自民党以外の選択肢がないと若者が思ってしまっているのではないか? という話も聞きます。

 

A:

今回は、野党のオウンゴール自民党が勝っただけ。積極的支持ではなかったとは思うんだけど、メディアも世の空気も論戦と真意を伝えるというより、小池さんの胸のうちはどうだの、裏切ったの、見限ったの、捨てたの……と、スキャンダラスに流れる情報ばかり。

途中でテレビを見るのが嫌になりました。

 

B:

情報が稚拙化しているというか、民衆の下に見られているというかなんだかすっきりしませんでしたね?

 

A:

本来政治は、私たち民衆のものであるべきです。そして税金の使い方などは、税を納める私たちが決めるべきです。なのに、なんだか今回の、「増税分は次世代の教育のために」とか「憲法に教育の無償化をいれる」とか、あんたに言われたくないわ! と思うことが多くありました。

 

B:

日本人の多くが、「お上」という意識から逃れられず、やはり何かをして貰うという意識が強いのでは?

なので、野党が何を言おうが、自民党にまかせておけば何かやってくれるという意識が多いのでは?

これまでのアベノミクスがどうだったかという評価もないまま、今度は教育費の無償化というなんか違う目玉を出してきているような気がするのは私だけなのかしら?

 

A:

自分たちの払った税金を自分たちのために使うために政治家がいる、という意識が低下しているのではないかと。今回の総選挙を通じて思いました。

私たちの税金の使い方をキチンと決めてくれるのが国会議員だと思うし、それと憲法に関する話が違うと思うんだけど、どうかしら?

ニューヨーク・タイムズは、「安倍は北朝鮮をうまく利用している」と書いていました。憲法問題についてきちんと語らず、情緒的に北朝鮮問題を使っていると。それって、不安商法と同じでしょう!?

それに対して、メディアもホント責任あると思います。

 

野野花:

アベノミクスってうまく話をもっていっているけど、結局かつての公共投資と変わらないですよね?

特区をつくって補助金という公共投資をする。

結局、自民党が勝ったことで、加計学園などの問題はうやむやになるでしょうね? きっとメディアがそんな雰囲気を醸し出すのでは? 加計学園公共投資と変わらないわけですよね。

 

父がかくもさまざまな言語操作を執筆したときには、ゼネコン工事が公共事業をされていましたが、それ以外にもありますよね。そんなことを話をしていたら公共事業と民衆についての記述を見つけました。

 

+++

P124

 

 一党独裁の柱のひとつである公共投資は、切実に不況でさらに重要な「役割」を占めていると、同日同紙の別の記事は伝えている。

 つまり、バブル経済の破綻による民間の経済の不調を、公共事業による官庁の発注が支えているというのである。

 公共投資への過度の依存の意味は、あまりにもはっきりしているだろう。つまりさらに一党独裁は、その権力を確立して、われわれが望む人間らしい社会の実現とは対立するありかたを、われわれに強要するだろう。

 権力の側の論理だけで、独裁が現実的に成立すると考えるのは観念的だろう。じっさいには民衆の側にも、一党独裁を期待し、あるいはその利益に参画したいという欲望があるからこそ、それは安定した権力構造たり得ているのだろう。むろん、そこには生活のためのやむを得ない選択という事実があって、すべてを「心がけ」の次元に帰着させるわけにはいかないのは当然であるにしても、やはり一党独裁への民衆の側からの参加こそが懸案になる。

 そのためにも、「一部の改選」などの欺瞞に欺かれるのではなく、根本的に官僚から、すべての許認可権を奪うことの改革を志向しなければなるまい。公僕とはほんらい、民衆に対して、誠意と専門性を以って向き合う存在のはずなのであり、そこに権力が派生することじたいがおかしいと考えるべきなのだ。

 

+++

 

 今回、本来、「素朴に民主主義について私たちも基本から再検討する」について考えようということだったけど、選挙の結果を受けあらためて日本のこれからを考えるにあって、日本人の体質とメディアについて考えさせられた週末でしたね。

次回は、改めこれから民主主義をどう考えるのかを、父の著作からピックアップして考えていきたいです。

 

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第37回 2017年10月16日

こんにちは、岡庭野野花です。

選挙戦も中盤です。町は、一層にぎやかになりそうです

 

A

選挙が告示されて、各政党は3極にわかれたけれど、私たちは選択しやすくなったのかしら?

 

B

「リベラル」や「保守」など、いろんな言葉が使われていて、言葉の意味そのものが、わかりにくいような気がします。

立憲民主党」の枝野代表は、

「保守とリベラルは対立概念ではありません…… ここにお集まりいただいている多くの皆さんが育ってきた時代、日本が輝いていたと言われた時代の、あの一億総中流と言われていた時代の、社会がこんなにギスギスしていなかった時代の、みんなが安心して暮らせていた時代の、日本社会を取り戻す。

私はリベラルであり、保守であります」と、言っているんだけど。

 

A:

2017105日付のデジタル毎日に、ずばり、

『「保守」「リベラル」って何?』との記事がありました。

 

 保守(保守主義)は、現状の制度や思想を尊重する立場。リベラルは英語の「自由な」に由来し、個人の自由を重んじて社会を変えていく立場で、欧米の歴史に根ざしている。ところが、今の日本で保守を代表する自民党は、日本国憲法が敗戦で押しつけられたものだとして伝統を重視する自主憲法制定を主張。安倍晋三首相が憲法改正を目指す。これに対し、戦後の基本的人権や平和主義に価値を置くリベラルの側は自民の改憲路線に反対しており、立場が逆転している。成田憲彦・駿河台大名誉教授によると、日本のリベラルのルーツは戦後の革新勢力にある。自由主義諸国とソ連など社会主義諸国の「東西冷戦」のもと、日本で1955年に自民党が誕生。社会党との与野党対決構図が続いた。労働組合の後ろ盾で護憲や反安保を訴える野党勢力は「革新」と呼ばれた。

成田さんは「革新勢力は社会主義を理想としたが、90年前後の社会主義陣営の瓦解(がかい)で退潮した。今のリベラルは『革新マイナス社会主義』で人権・平和の理念を掲げている」と話す。

自民党にも昔からリベラル派がおり、今は岸田文雄政調会長の率いる岸田派(宏池会)がそう目される。成田さんは「安全保障環境の変化などで自民党が右傾化しているが、国民の5割は改憲に反対だ。保守色が強まる国政の空白を埋める形で立憲民主が伸びる要素もある」とみる。

 一方、国際医療福祉大の川上和久教授(政治心理学)は「社会民主主義を掲げる欧州のリベラル政党は福祉を重視し、大きな政府を志向する。それには税負担が欠かせない」とした上で、「日本のリベラル勢力は福祉重視を訴えても必要な負担増をこれまで国民にきちんと求めてこなかった」と指摘する。「リベラル色を出そうと外交安保分野で政権批判を繰り広げてきたが、高負担を前提とする現実的な社会像を描き、保守勢力との対立軸として国民に示せるかどうかが、今後の試金石となる」と話す。

 

野野花:

父は、『かくもさまざまな言論操作』の中で次のようにも述べています。

 

+++

 

P190

 

 民主主義ということについて、あたらめて根本から考え直す必要があるように思える。どうしてことさらそんなことを言うのかと、不思議に思う人もいるかも知れない。日本は民主主義の国家であり、民主主義は自明の原理であるはずだ。それなのに、いまさら変なことを言いだすものだ、と。

 だが、はたしてそうだろうか。「自明な前提」ということにかえって欺かれて、じつは日本の民主主義について基本から再検討することを、わたしたちは怠っているのではないだろうか。そういう風に考えると、これほど欺瞞的なものもないのではないだろうか。

 

 なによりも軽薄な経済主義への反省を前提にしなければならない。いわばポスト・バブルの時代は、ある意味ではプリミティブなものを大事にする時代であるとも言える。プリミティブなものを大事にして、それをプリミティブな思考や感性においてとらえる。プリミティブというのは素朴と言ったほどの意味だが、また基本という意味でもあるだろう。

 

 日本ははたして、民主主義の国なのだろうか。この問いを、わたしはきわめてプリミティブに言っている。自明なものを「素朴に」「基本的に」問い返せば、実はあらためてその欺瞞に気がつく。

 そうであるなら、この場合は「自明」なことこそがもっとも疑わしいのだ。そしてそれは、どうやら「作られた自明」とでも言うべきものであって、自明であることによって民衆を欺くトリックになっている。権力が、意図してそうし向けているのである。

 

さらにページ進めて……

 

+++

 

P192

 

  ふたたび「素朴と基本」の立場から言うなら、いったい誰にとっての、誰のための、誰によって担われる民主主義なのか。問われるべき本質はまさにそこにある。民主主義がファッシズムの手段になるなど、いくら欺瞞としても腹立たしいかぎりではないか。

 そのような事態を改めていきたいために、わたしたち市民は、民主主義という概念をまさに自前のものとしていかなければならない。わたしたち自身によって担われる以外のものではないという覚悟を、持たなければならないのである。

 そのようなものとしての民主主義を、私は共生的民主主義と呼んでおきたい。

A/B:

なんと! 共生的民主主義ですか? 

今回の選挙はあらためて、「素朴に民主主義について私たちも基本から再検討する」、とってもいい機会なのかも?

 

野野花:

そのためにどうするべきなのかを、次回の編集会議で話ましょう。

 

みなさん、棄権せずに、投票に行きましょう。

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